十里木山荘

現在コンクリートの集合住宅に住んでいるので、一番希望するのは木のぬくもりを感じさせる家です。具体的な要望として、ユニットバスではなく家族で入れる大きなお風呂、3家族12名位が泊まれること。炎を楽しむ薪ストーブなど、思い出をいっぱいつくれる家をお願いします。あとはお任せします。「どんな家ができるか楽しみです。」と、建て主からの依頼でした。 

 

日常生活から解き放たれ、週末に家族、友人のつながりを大切にするための週末住宅として、日本の伝統的民家の真髄である“一室住宅”を提案しました。この提案の背景には、幼い頃の一時期、民家で暮らした私の経験と、学生時代から続けてきた古民家の研究があります。

 

  延面積125㎡(38坪)を軽い建具で仕切る一室空間。家族だけではなく時には数家族が寝泊まりでき大勢で過ごせる空間。具体的には、ダイニング、リビングさらに和室へと雁行した平面と、吹抜けを介して上下につながった大空間。開放的で伸びやかな“一室住宅”としました。

 

 この“一室住宅”を支える重厚な木構造は、木造本来の魅力でもあります。外周の大壁と屋根なりの天井で囲まれた白い空間に構造材の梁と柱が主役としての存在感を際立たせます。

 

 片流れ天井にさび竹を空中に渡し、舟底天井にみたてた和室。ガラス超しの自然林を背景に設置した薪ストーブ。テラス戸を全開にして屋内とつながった屋外室としての木製デッキ。2階にある見晴らしのよいデッキ付きの家族風呂。等々が週末生活を豊かに支えます。

 

 この住宅には、階段周りのローテーション(周回する動線)をはじめ、屋外室としてのデッキを介していくつものローテーションが組まれています。そこで子供たちはかくれんぼや鬼ゴッコを楽しみ、大人は行動の自由さと空間の広がりを感じます。